世界展開力事業の計画内容について

本事業は参加学生に微分型成長を促すことを目標としていることから、事業全体を三つのステージに区分して設計する。なお対象学年はあくまでも目安であり、学生の意欲や関心により、どのステージからの参加も可能である。また本事業による全てのプログラムが日米学生の共修や米国内での研修やインターンシップであることから、全プログラムを原則英語にて実施する。

1. 基本ステージ:
Global Academy(派遣・受入)

入学後のなるべく早い時期の学生を対象に、グローバル教養とそれに求められるマインドセットの涵養を目的に設計する。Global Academyは(1)名古屋大学学生のノースカロライナ州立大学への派遣プログラムと、(2)名古屋大学の学生と米国側連携大学の学生の共修プログラムで構成される。

(1) ノースカロライナ州立大学への派遣プログラム

ノースカロライナ州立大学が開発し、現地にて実施するコースを、名古屋大学の正規教養教育科目として開設する。参加学生はこのコースを履修することにより、名古屋大学の単位が取得できる。

(2) サービスラーニングの国際共修プログラム

名古屋大学学生と米国側連携大学の学生が主体となって、地域経済・社会への貢献を目指す国際共修プログラムである(2024年度春学期より開講)。名古屋大学は春学期に教養科目(学部によっては専門科目)として開講し、米国側連携大学は夏季セッションで単位取得可能科目として開講する。前半は日米学生がCOILで共同学習し、その後米国側連携大学の学生が来日して合同でフィールドワークを行う。初年度のフィールドワークは愛知県内の自治体の協力を得て観光による地域創生をテーマに実施する。

2. 戦略的ステージ:
競技と反省を軸とするSTEAM国際共修プログラム(受入・派遣)

課題発見力、解決に役立つ学際的知識の取得、コミュニケーション力やプロジェクトマネージメントスキルの向上などを目標とする総合学習の機会とする。STEAM国際共修プログラムは、(1) モノづくり・コトづくりの異分野協働作業プロジェクト、(2) GX、環境問題に関する異分野融合型国際共修プロジェクト、(3) NUSIPなどの日米間の既存プログラムの機能強化で構成する。本ステージのプログラムは学部学生および大学院生を対象とする。全てをグループワークによる競技形式で実施し、競技会では参加学生によるルール作り、相互評価と振り返り(反省)というプロセスを重視することで、単なる勝敗を競うのではなく、個々の学生が持つ微係数(傾き)を全員で評価するシステムを作る。これにより自律協働型の課題解決の経験を身に付けた多様性のある人材の育成を目指す。

(1) モノづくり・コトづくりの異分野協働作業プロジェクト

飛行ロボットの開発(工学部)、都市型畜産(農学部)、高齢化社会における健康保険制度(医学部)という、学際的でかつ社会実装が求められる三つの課題をテーマにSTEAM型プロジェクトを設計する。名古屋大学および米国側連携大学の学生は自らの所属学部や研究科、学年に関わらず、最も関心の高いテーマを選定し、参加することができる。プロジェクトでは日米双方の学生を含む混合の小チームを編成し、オンラインにてグループワークを実施する。グループワークの成果の発表の場となる競技会およびその後のリフレクション(反省)は、プロジェクトごとに名古屋大学東山キャンパスや付属フィールドセンター、またはノースカロライナ州立大学名古屋大学キャンパスにて対面にて、もしくはアバターを用いたバーチャルリアリティ空間で開催する。また名古屋大学教育学部附属高校学生の参加を促し、高大連携の機会とする。

(2) GX、環境問題に関する異分野融合型国際共修プロジェクト

名古屋大学国際環境人材育成プログラム(NUGELP)は2009年に開始し、これまでに大学院留学生196名、日本人105名が参加している。このNUGELPの科目にて、オンラインで日米双方の学生がグループをつくり、現地・出身国のGX・環境問題に関連したテーマを設定し、問題状況を紹介しながらそれに即した規制・課題解決策を提示し(競技会)、相互評価をおこなう(反省のプロセス)。STEAM教育プログラムとし全研究科に開放する。競技会にて優れた提案をしたグループをノースカロライナ州立大学に派遣、もしくは米国側連携大学から招聘し、資源・エネルギー転換に関する研究施設やインフラ、周辺地域でのフィールドワークを行う。

(3) NUSIP(Nagoya University Summer Intensive Program)の機能強化

名古屋大学夏季集中講座(NUSIP)は、自動車工学のサマープログラムとして、2008年から2019年の受入実績は358名(2020年~2022年はコロナ禍で受入れ休止)であり、そのうち211名を米国からの学生が占めている。2023年度からの再開に伴い、開始から10年を経過していることも踏まえ、本事業の趣旨に沿ってプログラムの強化を図る。具体的には、協定校である米国からの優秀な学生の受入れを一層促進し、また、プログラムの最後には、グループ単位の異分野協同作業によるプレゼンテーション、その発表審査会及び総合討論会(反省会)を実施し、相互評価するシステム構築する。

3. 応用ステージ:
自律的学習・研究インターンシッププログラム

主として大学院生を対象にした長期派遣・受入プログラムである。博士前期・後期研究指導を前提としているため、米国協定大学との交換留学制度やジョイントディグリープログラムを通じて実施する。(1) 既存の交換留学制度や大学院生交流プログラムの拡充と、(2) 米国大学とのジョイントディグリープログラムなどを創設することで大学間人的交流の深化を目指す。

(1) 米国協定校との相互派遣プログラムや大学院研究インターンの拡充

工学研究科の日米加協働教育プログラム(JUACEP)を通じて米国・カナダとの協定校との間で、これまで受入101名、派遣116名の実績がある。研究室に所属する研究留学であることから、国際競争力を備えた世界トップレベルの若手人材の育成の点から高い評価を受けてきた。本事業により、受入、派遣の数的規模を順次拡大する。また、名古屋大学医学部が過去30年にわたって展開している米国協定大学(ジョンズホプキンス大学、デューク大学、チューレン大学、ペンシルベニア州立大学等)との医学生相互派遣プログラムについても交流規模を拡大する。医学部附属病院を活用した医学教育を行い、協定大学とともに国際的医療人材の育成とネットワークの構築を図る。

(2) 米国大学とのジョイントディグリープログラムなどの創設

医学系研究科はノースカロライナ大学チャペルヒル校医学部・医学研究科と、大学院生が先方大学にて半年から1年間研究する機会を提供する共同教育プログラム(Joint supervision program)を実施し、修了生には名古屋大学およびノースカロライナ大学チャペルヒル校よりCertificateを授与している。このプログラムの発展的改訂を目指し、博士後期課程のジョイントディグリープログラムの5年以内の締結実施に向けた検討を進める。